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次世代に解を挑戦のプロット

PROJECT REPORTS 001

共創で再エネ拡大の課題に具体策を。(3/5)

世界初の分散型ID活用VPPシステムの構築を開始

NR-Power Lab株式会社 代表取締役社長 中西 祐一, 最高技術責任者 東 義一, 事業部長 原田 忠克, シニアマネージャー 疋嶋 秀敏/ CollaboGate Japan株式会社 代表取締役社長 三井 正義 / 株式会社Sassor 代表取締役社長 石橋 秀一 , 取締役 矢嶋耕平

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まずはCollaboGate Japanの事業内容について教えてください。

CollaboGate Japan 三井代表取締役社長(以下、三井):私たちは、オフィス、リテール、エネルギー、インダストリーなどの分野において、モノがインターネットと安全につながるためのデータトラスト基盤を提供するベンチャー企業です。

 モノがインターネットにつながるフィジカル空間とサイバー空間の間のデータの通り道には、ランサムウェアやデバイスのなりすましなど、さまざまな問題があります。それらに対処するため、データのセキュリティとトラスト(信頼性)の課題をクリアする、新しいデータ流通の仕組みをつくり国際標準化を推進すること、さらにこのデータインフラを誰もが簡単に使えるサービスの開発を行っています。

今回のVPPシステムに活用される「分散型ID」とはどのようなものなのでしょうか?

三井):シンプルに言うと、流れるデータのセキュリティとトラストの課題を解決する新しいデジタルIDの仕組みです。現状の仕組みでは、インターネットにつながるデバイスがなりすましではないことを証明する暗号鍵や証明書管理をひとつひとつ人の手を介して行っています。具体的に、作業者はデバイスごとに暗号鍵ペアを作成し、対応する公開鍵と署名要求を認証局に送信し、公開鍵証明書を取得します(有料)。次に作業者は、この暗号鍵と取得した公開鍵証明書をひとつひとつのデバイスに書き込む必要があります。この作業には高い費用が発生するだけなく、プロセスに脆弱性が存在します。これからの10年間で累積1兆個ものデバイスがインターネットに繋がると予想されており、こうしたデータセキュリティとトラストに関する課題はますます深刻になっています。

 これを解決するために、NodeX Agentという分散型IDの仕組みを活用したエージェントを開発しています。これをデバイスにインストールすると、デバイス内部で自律的に暗号鍵ペアが生成されます。このデバイスの公開鍵をブロックチェーン上で構築するネットワークに登録することで、デバイスの識別子と公開鍵の紐付けを行います。この仕組みにより、デバイスの信頼性を担保することができ、なりすましを防止することができます。このプロセスは、従来の認証局や人の手を必要としません。私たちはこの分散型IDの仕組みを活用したデータトラスト基盤「NodeX」を開発し、SaaSとして提供しています。ブロックチェーンの活用と自動化により、モノがインターネットにつなぐ際のセキュリティとコストの両面を解決することができます。

共創パートナーとして参画した経緯をお話いただけますか?

三井):モノをインターネットにつなぐ際のトラストの問題は、事業領域に関係なくどこにでも存在しています。私たちはサービスを提供する分野をオフィス、リテール、エネルギー、インダストリーに絞っていますが、その中でもエネルギー分野でのデータ活用は、ビルや工場といった施設から一般家庭の全世帯までの広い裾野があること、脱炭素や再エネ利用などの社会的課題解決につながることなどから取り組む意義を感じておりました。きっかけを探していたところで、NR-Power Lab の東さんからお話をいただきました。

 エネルギーの安全保障のような観点から言えば、外的脅威にさらされてしまう状態は避けなければなりませんし、そもそも再エネ拡大をしていく上で、こうしたデータセキュリティやトラストを担保するための仕組みというのは、初期にしっかり作っていかないと、再エネ市場そのものが大きくなっていかないので、その課題意識が東さんと一致していていいなと思っていますね。

今回の共同開発で、どのようなことを期待されていますか?

三井):期待することは2点あって、まず、NR-Power LabのVPPシステムに、弊社のデータトラスト基盤「NodeX」を組み込むことで、NR-Power Labの電力デジタル事業に貢献し、世界初のリファレンスケースを示すことです。

 もう一つは、電力需給調整、脱炭素、再エネ利用などの社会課題の解決に向けて、10年後の電力市場を見据えつつ、環境省や経産省、この分野に携わる様々なプレイヤーの皆様との対話を通じて、データセキュリティとトラストに関する標準化を推進していくことです。

 この2点に大きな意義を感じており、この共創パートナーに参加できたことを嬉しく思っております。

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