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次世代に解を挑戦のプロット

PROJECT REPORTS 001

共創で再エネ拡大の課題に具体策を。(4/5)

世界初の分散型ID活用VPPシステムの構築を開始

NR-Power Lab株式会社 代表取締役社長 中西 祐一, 最高技術責任者 東 義一, 事業部長 原田 忠克, シニアマネージャー 疋嶋 秀敏/ CollaboGate Japan株式会社 代表取締役社長 三井 正義 / 株式会社Sassor 代表取締役社長 石橋 秀一 , 取締役 矢嶋耕平

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まずはSassorの事業内容について教えてください。

株式会社Sassor 石橋代表取締役社長(以下、石橋):私たちは2010年の設立以来、エネルギー分野でIoTとAI技術を使って事業展開してきました。当初は電力の可視化を行うソフトウェアだけではなく、センサー等ハードウェアの開発などを行っていましたが、再エネ普及が求められ始めると同時にVPPの必要性が認識され、蓄電池を自動制御する領域に徐々にシフトしました。

 現在はAIを活用したVPPシステム「ENES」や、電力に関するデータ分析サービスなどを中心に事業を行っています。

蓄電池制御最適化AI「ENES」とはどのようなものでしょうか?

石橋):私たちが手がける「ENES」は、蓄電池のパフォーマンスが最適になるよう制御するための技術です。太陽光発電などの再生可能エネルギーで電力すべてをまかなうことができればよいですが、実際には天候によって太陽光や風力の発電量は変動しますし、電力消費も常に一律ではありません。そこでこれまでのデータの蓄積をもとに電力需給や発電量を予測します。さらにその予測データに基づいて、蓄電池の充放電について電力量や時間帯をAIが最適化します。多数の蓄電池をすべて一律に制御するのではなく、ひとつひとつの蓄電池の電力残量など、それぞれの状況にあわせて、最も効率的になるように、また蓄電池の各所有者が一番損のないように自動制御を行うシステムです。実際には、蓄電池を何千・何万と同時に制御する必要があり、その制御のロジック、アルゴリズムには長い間蓄積してきたデータにもとづくノウハウがあり、特許申請しているものもあります。

共創パートナーとして参画した経緯や、期待することなどをお話いただけますか?

株式会社Sassor 矢嶋):私たちも展示会にはよく出展しているのですが、NR Power Labさんがブースに来られて名刺交換したのがスタートですね。私たちの強みとしては、ソフトウェアだけでなくハードウェアも開発してきましたので、蓄電池や太陽光発電周辺の制御する対象を測る計測機器から、クラウドソフトウェアまで全部ワンストップで提供できます。また、蓄電池の制御に関しては10年前から、VPP事業へは5年以上前から参入しており、VPPに必要な技術は概ね取り組んできたので、そのあたりで今回の共同開発のパートナーとして選んでいただけたのかなと思っています。

 私たちとしても、まず日本ガイシが蓄電池そのものを作っているというのは大きいですね。蓄電池を制御する技術や、導入先とのつながりもありますし、地域新電力のプロジェクトにも参加されています。リコーは再エネ電力の小売りもされていますし、営業力という点でも将来のお客さんとつながれる可能性もあります。こういったところは私たちに足りていない大きなピースです。私たちはソフトウェア、エンジニア中心で、主にコードを書いてる集団なので、物理的な世界、蓄電池の中身だったり蓄電池が設置される電気配線的なこと、電力小売りのことなどについてはやはり弱いです。そこはNR Power Labさんと組むことで得られる実証実験の環境や知見というのは大変助かるところです。

石橋):VPPは、持続可能な社会を支えるための未来のインフラになっていきます。太陽光や風力に限らず、地熱とか水素エネルギーとか、どんどん再生可能エネルギーが増えてますが、それらが電源として参加するためにはVPPの仕組みは必ず必要で、分散型電源を増やしていく、電力の自給率を上げていくということは、私たちの「ENES」プロジェクトの目標でもありました。

 現在は、系統電力網に直接接続された大きな系統用蓄電池は比較的制御しやすいのですが、工場や一般家庭に設置されている小さな蓄電池は、さまざまな制約の問題などもあり制御のハードルが高いのが現状です。今後は小さな蓄電池もたくさん集めて制御する必要がありますので、計測方法の緩和などを含めさまざまな方々と協力して働きかけていくことも大切だと思っています。また、今回共同開発するVPPシステムは、他のアグリゲーターさんや地域新電力へ、システム提供という形での広がりも期待できます。この共同開発で、持続可能な社会を支えるための未来のインフラに貢献でき、私たちの目標もスピードアップしてクリアできる、そういう期待感を持っています。

[次ページ]共同開発するVPPシステムで思い描く今後の展開
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