経済性を最大限に引き出す
VPPを目指して。(1/3)
リコー環境事業開発センターでVPPサービスの実用化に向けた実証を開始
リコージャパン株式会社 パブリックサービス本部 スマートエネルギー事業部 電力事業企画室 室長 佐藤 浩和/株式会社リコー RDS 環境・エネルギー事業センター付 原田 忠克/NR-Power Lab株式会社 事業企画担当 今野 良太郎, シニアエンジニア 黒田 幹朗
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NR-Power Labは、リコー環境事業開発センターにてVPPサービスの実用化に向けた実証を開始します。同センター内に、太陽光発電と日本ガイシの大容量蓄電システムNAS®電池を設置し、NR-Power LabのVPPシステムの技術検証を行います。また、電力小売としてリコージャパン、電力需要家としてリコー環境事業開発センターも参加し、経済性を最大限に引き出すVPPノウハウの獲得を目指します。
今回の実証の参加メンバーである、リコージャパン株式会社 パブリックサービス本部 スマートエネルギー事業部 電力事業企画室 佐藤室長、株式会社リコー 環境・エネルギー事業センター 原田、NR-Power Lab株式会社 事業企画担当 今野、シニアエンジニア 黒田に聞きました。
小売電気事業者と電力需要家の両方に向けた経済性の検証
今回、静岡県御殿場市にあるリコー環境事業開発センターで、VPPサービスの実現に向けた実証が行われます。まずこの実証の概要を教えてください。
NR-Power Lab 事業企画担当 今野(以下、NR-Power Lab 今野)まず今回の実証に参加するメンバーは、VPPシステムの開発を行ってきたNR-Power LabとSassor、電力小売のリコージャパン、電力需要家のリコー環境事業開発センターが参加します。今回の実証では、大容量蓄電システムNAS®電池の実機を使うため、NAS®電池製造メーカーの日本ガイシも参加して一緒に進めます。
これまで、NR-Power LabとSassorが共同開発してきたVPPシステムで、小容量のリチウムイオン電池の制御実績はありますが、大容量のNAS®電池の実証は初めてです。まずは想定通りの動作ができるかの確認から始めて、徐々に制御を最適化させていき、NAS®電池の利用効率が最大となるよう調整していく、という技術実証が大きな目的です。
また、経済性の実証も同時に進めていきます。需要予測などの様々な予測を使って蓄電池の充放電制御をして、電力需要家に対して経済的なメリットを出せるよう検証します。そのためにまずVPP制御の実力確認から始めて、段階的に経済性を最大限引き出すためにチューニングしていきます。同じように、電力小売としてはインバランスや容量拠出金など、電力に関するコストの低減が今後より一層大きな課題となりますよね。これらの電力関連コストをいかに下げられるかも、とても重要なポイントです。リコージャパンから、電力小売としてのノウハウに基づいたアドバイスを受けながら実証を進めていく予定です。この実証で、電力小売と電力需要家の両方に向けた経済性の実力が見えてきますので、VPPサービスの具現化が大きく進みそうで楽しみですね。
まず技術面ではどのような検証をしますか?
NR-Power Lab シニアエンジニア 黒田(以下、NR-Power Lab 黒田):VPPを簡単に言うと、市場の電力需給バランスや経済性を勘案して、分散している蓄電池などのリソースを遠隔で制御して、電力を供出したり蓄積したりする仕組みと言えます。
VPPシステム内では、必要なタイミングで分散したリソースを制御するために、個々のリソースの使用可能量や、電力需要、市場価格、そこに大きく影響する気象など様々なデータを予測して、複合的に計算して個々のリソースをいつどのように使うのか決めていきます。この予測・演算機能は、主にパートナーのSassorのシステム「ENES」を活用します。
それと併せて、送られた制御指示に沿って適切にリソースを動かす機能も新たに必要です。今回、リコー環境事業開発センターには日本ガイシのNAS®電池が設置されますので、NAS®電池とENESの間で情報や制御通信のやり取りを適切にするための装置をNR-Power Labのメンバーが中心になって開発しています。
ENESでNAS®電池を制御するのは初めての試みなので、まずはENESでの予測・演算結果をもとにして、NAS®電池の制御を適切に行えることを検証していくことが本実証の一番の目的ですね。
経済性の実証にあたっては、特にどの部分の評価がポイントになりますか?
NR-Power Lab 黒田:経済性の実証については検討段階の部分が多いので、まずは大きく影響する蓄電池の応答性の確認など、技術的にアプローチできるところから始めます。再エネの普及拡大に伴い電力の業界も変革の時期を迎えており非常に複雑なので、電力小売の立場からの課題については、リコージャパンから詳しく共有してもらい、システムの改良、そして実機での検証というサイクルを回していく予定です。