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次世代に解を挑戦のプロット

PROJECT REPORTS 004

2024.06.13

経済性を最大限に引き出す
VPPを目指して。(2/3)

リコー環境事業開発センターでVPPサービスの実用化に向けた実証を開始

リコージャパン株式会社 パブリックサービス本部 スマートエネルギー事業部 電力事業企画室 室長 佐藤 浩和/株式会社リコー RDS 環境・エネルギー事業センター付 原田 忠克/NR-Power Lab株式会社 事業企画担当 今野 良太郎, シニアエンジニア 黒田 幹朗

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リスクを回避して電力調達コストの安定化を目指す

今回、電力小売の立場として、実証に参加する目的を教えてください。

リコージャパン株式会社 パブリックサービス本部 スマートエネルギー事業部 電力事業企画室 室長 佐藤(以下、リコージャパン 佐藤):リコージャパンでは、「脱炭素時代に向けて、長くお客さまに寄り添える」パートナーとしての事業を推進していまして、そのひとつの手段として電力事業があります。昨今のエネルギー価格の高騰による電気代の上昇が社会的な課題となっているため、その解決策となる具体的なモデルの構築をこの実証に期待したいです。

電力小売として、日々感じている環境の変化や課題をお聞かせください。

リコージャパン 佐藤:電力小売としては、「電力調達のコストをいかに下げるか」という点が非常に大きな課題です。特に、2024年から容量拠出金制度が始まりましたが、この制度による電力小売へのコストインパクトは大きくて、利益を圧迫する要因になっています。容量拠出金を価格に転嫁することもできますが、旧一電の標準価格内に抑えないと、電力需要家に対して競争力を損なうので、頭を悩ませている電力小売も多いと思いますよ。
この容量拠出金制度に対応していくには、各電力小売で抱えている電力需要家全体のデマンドカーブを変えたり、そのピークを落とすようなことが必要なので、デマンドをコントロールして、ピークを落とす対応ができるかどうかがとても大切になってきますね。

 また、電力調達を取り巻く環境も、年々ルールが変化しています。その影響から電力を市場から調達する必要性が増していますが、日々電力価格は変動するため、これはリスクとなります。2021年冬から2022年に市場電力価格が高騰し、業績悪化によって倒産や事業撤退した電力小売も多くて、電力業界にとっては大変な年でした。やはり今後、電力小売として生き残っていくためには、これらのリスクを回避して電力調達コストを安定化させていくことは必須ですね。

今回の実証でのリコージャパンの役割を教えてください。

リコージャパン 佐藤:NR-Power Labで開発中のVPPサービスをリコージャパン電力メニューに組み込むことを考えていますので、まずは経済性の実証を両社で協力し進める予定です。また、リコージャパンで利用している電力システムがあり、このシステムとVPPサービスの連携も検証していきます。

新たな電力料金メニューから蓄電池の導入支援まで

今回の実証を通して、将来的に需要家に対してどのようなサービスが提供できるようになるとお考えですか?

リコージャパン 佐藤:VPPは蓄電池の設置とセットで考えることになりますが、まず電力需要家さまの総デマンドのピークカットによって容量拠出金を削減することですね。また電力価格が安い時に蓄電池に充電し、高い時に放電する市場電力価格との値差を利用し、安定的に利益を生む制御を行うことで、電力調達コストを抑制する電力料金メニューを提供したいと考えています。もちろん、VPPによる利益で蓄電池の費用もペイできるようにしたいですし、収益をどの程度電力需要家さまに還元できるかといったことも含めて、経済性実証も細かく確認していきます。

 ちなみに、デマンドコントロールによって、調達計画に対して実需要量を近づける動きもできますから、需要計画と実績の差があった場合に支払うインバランスコストも低減させることができて、これも電力小売のコスト削減につながります。
電力需要家さまが太陽光発電などの再エネをお持ちの場合は、再エネの発電余剰を蓄電池に貯めることができるので、電力料金の低減だけでなく、再エネ利用率向上にも効果的です。また、蓄電池はVPPのためだけに利用する必要はなくて、BCP対策としての利用と両立できるので、BCP対策を検討されている電力需要家さまにもプラスのメリットがあります。

 リコージャパンでは脱炭素商材も豊富に取り扱っていますので、蓄電池の導入についてもワンストップでサポートすることを検討しています。例えば、初期投資にご不安のある電力需要家さまに対して、蓄電池の導入障壁を下げる仕組みを構築するなど検討していく必要性は感じています。

NR-Power Lab 今野:また、VPPへの付加価値として、発電所や需要場所のスマートメーターなどからデータを収集する「再エネトラッキング」技術をはじめとするデジタルサービスによる環境価値提供など、脱炭素への取り組みを支援するソリューションをトータルで提供していく予定です。脱炭素支援ソリューションの強化によって、電力需要家にさらに満足していただけるよう、NR-Power Lab としてお役に立てればと思っています。

[次ページ]VPP運用による蓄電池の経済性評価とBCP対策
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