柔軟性の高いビジネスモデルで、
蓄電所の可能性を最大化する。(1/4)
シェアリング機能付きハイブリッド蓄電所の開発を開始
大和エナジー・インフラ株式会社 代表取締役社長 松田 守正 / NR-Power Lab株式会社 代表取締役社長 中西 祐一
関連情報:【プレスリリース|2024.06.13】シェアリング機能付きハイブリッド蓄電所のビジネスモデル開発を開始~蓄電機能のみを提供するアセットフリー型サービスを目指す~
NR-Power Labは、シェアリング機能付きハイブリッド蓄電所「StorageHub」の開発をスタートします。このプロジェクトでは、蓄電所の建設から運営、サービスまでをワンストップで提供するビジネスモデルの構築を目指しています。また、日本ガイシと大和エナジー・インフラでStorageHubを保有管理する会社設立を視野に入れるとともに、大和エナジー・インフラは資金の一部を提供し、これまでの再エネ・インフラ投資の知見を活用することで、StorageHubの事業化を支援していただきます。StorageHubプロジェクトの発足の経緯とこれからの展開まで、NR-Power Lab中西社長、大和エナジー・インフラ 松田社長にお話しいただきます。
蓄電所が注目を集める背景とその課題
今回のシェアリング機能付きハイブリッド蓄電所「StorageHub」の開発にあたり、現在、蓄電所が必要とされる背景を教えてください。
NR-Power Lab 代表取締役社長 中西(以下、NR-Power Lab 中西)蓄電池はこれまでも再エネ発電所や電力需要家の個別の電力設備の一部として、特定の電気の発電や需要に対して充放電し、電力品質の安定化や非常時の電力供給、電力料金削減などに貢献してきました。
そのような蓄電池の従来の使い方に対して、近年注目が高まっている蓄電所は、大量の蓄電池を集中設置し、電力の送配電網に直接接続して利用されるスキームです。このため、蓄電所は公共性の極めて高い電力インフラの一部として機能します。
大量の蓄電池を巨大な一つの電池のように制御・運用する蓄電所ですが、日本では事例が少ないものの、当社の出資者である日本ガイシの大容量蓄電システムNAS®電池は、2010年代初頭からすでに、アブダビやイタリア、ドイツをはじめ大規模な設置実績があり、インフラの一部として活躍しています。
蓄電所が必要とされる背景は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた、再生可能エネルギーの導入拡大です。再エネは、気候変動の抑制や持続可能な社会の実現に向けた重要な要素となっていますが、再エネの特徴として発電量が大きく変動することが挙げられます。例えば、太陽光発電は発電量が日照時間に左右されますし、風力発電は天候や季節によって出力が不安定になります。
一方、電力は常に消費量と発電量が同時同量である必要があります。このバランスが崩れると最悪の場合、大規模停電となるリスクが高まります。再エネを既存の電力インフラに統合させ、さらに主力電源として活用していくには、電力の需給バランスを整える調整力の確保が極めて重要で、その調整力を提供するリソースの一つとして、大量の蓄電池を集中設置する蓄電所の役割に期待が集まっています。
蓄電所を建設するにあたり、一般的にどのような課題がありますか?
NR-Power Lab 中西:私は、蓄電所は発電量が不安定な再エネを安定電源として活用するための重要な電力インフラの一部として、今後なくてはならないものになると捉えています。
その一方で課題は、大量の蓄電池を揃えるにはそれなりの投資が必要になる点です。投資回収期間は長期にわたるのですが、例えば国際情勢により大きく変動するエネルギーや電力価格、再エネ導入拡大に伴う電力の制度変更など、多くの不透明で不確実な要素が互いに絡み合うことで、蓄電所の投資回収性は大きく影響を受けます。
安価なシステム構成にすれば、投資回収という観点ではリスクが低減するかもしれません。しかし、国民の生活や経済を支える基幹インフラの一部が、果たしてそれでよいのでしょうか?投機的利益を狙って建設された一部の太陽光発電所の問題が全国で顕在化していますよね。粗製乱造とまでは言いませんが、信頼性が犠牲になりかねません。
また、投資の判断をしたタイミングでそれなりの規模の投資をし、最適なシステムを構築できたとしても、これだけ変化の激しい時代に、5年先、10年先でも最適なシステムなのかわかりませんね。実際、私が欧州に駐在していた時も、リチウムイオン電池の蓄電所が建設完了後に運用開始を見送るという事例がありました。
このようなことから、基幹インフラの一部としてしっかりと役割を果たしながら、しかも変化にも対応できるスキームとはどのようなものか、今でも私たちは考え続けています。