柔軟性の高いビジネスモデルで、
蓄電所の可能性を最大化する。(3/4)
シェアリング機能付きハイブリッド蓄電所の開発を開始
大和エナジー・インフラ株式会社 代表取締役社長 松田 守正 / NR-Power Lab株式会社 代表取締役社長 中西 祐一
StorageHubのコンセプトに見る可能性
大和エナジー・インフラのこれまでの取り組みを教えてください。
大和エナジー・インフラ株式会社 代表取締役社長 松田(以下、大和エナジー・インフラ 松田):大和エナジー・インフラは2018年10月に事業を開始した会社で、再生可能エネルギーやインフラアセットに投資を行う投資会社です。大和証券グループの投資会社の一つである大和PIパートナーズにて、2013年より太陽光発電所への投資を開始し、今後、より注目・拡大が期待されるエネルギー・インフラ分野への投資を拡大するために、大和PIパートナーズからエネルギー分野への投資機能を移管した会社です。
当社は2024年3月時点で、1700億円の投資残高を積み上げています。国内では太陽光発電所を中心に、バイオマス発電所などの再生可能エネルギーの分野に投資をし、海外においてもアメリカとオーストラリアで太陽光発電所への投資、欧州では英国の配電事業を行う会社やスペインの光ファイバーケーブル事業を行う会社など、さまざまな再生可能エネルギー・インフラアセットの分野に投資をしています。
蓄電池は注力分野の一つで、海外ではアメリカの系統用蓄電池への投資、欧州では当社投資先のアキラ・キャピタルが大規模な蓄電池の開発を行っています。国内でも系統用蓄電池や太陽光発電所併設型の蓄電池への投資、さらに蓄電池のベンチャー企業への投資を行っています。
また、大和証券グループでは経営方針として「お客さまの資産価値最大化」を掲げており、大和エナジー・インフラではこれまでの再生可能エネルギー・インフラアセットへの投資の知見・実績を活かした良質な投資機会を大和証券のお客さまにご提供するという役割を担っています。2021年には北海道の複数の太陽光発電所を投資対象とする北海道メガソーラー私募コアファンドや、全国各地の太陽光発電所を投資対象とする太陽光私募コアファンド「アマテラス」を設立し、大和証券のお客さまに再生可能エネルギーへの投資機会をご提供しています。
今回のStorageHubプロジェクトの中で担う役割を教えてください。
大和エナジー・インフラ 松田:脱炭素社会の実現に向け再生可能エネルギーの導入が加速する中、再生可能エネルギーは天候などの影響により発電量が大きく変動し、電力価格、送電線や出力制御と呼ばれる需給バランスなどの課題が発生するため、電力系統の安定化に寄与する蓄電池の重要性が増しています。
一方で蓄電池のビジネスは現在発展途上であり、蓄電池の需要が急速に拡大をしていく中で、新しい蓄電池の開発も進んでいます。脱炭素社会に貢献する成長分野を支援する資金提供を行い、新しい技術やサービスの導入が促進されるようなSDGsやESGに資する投資を行うことも投資会社としての役割の一つであると考えています。
当社はこれまでに再生可能エネルギーや送配電事業、蓄電池の分野の投資を行う中で再生可能エネルギー・インフラ分野での経験を蓄積しており、金融グループとして幅広いネットワークも保有しています。今回のプロジェクトにおいて、将来の拡大を見据えたビジネス戦略を描く際に、当社のこれまでの知見を活かすことができると考えています。
このプロジェクトにどのような可能性を感じていますか?
大和エナジー・インフラ 松田:蓄電池への投資というと、系統用蓄電池、再エネ併設型の蓄電池への投資や蓄電池に投資して長期脱炭素電源オークションに参加するという方法がありますが、蓄電池に移設機能を持たせ、シェアリングを行うというNR-Power Labのビジネスコンセプトはこれまでに聞いたことがなく、非常に興味を引かれました。
蓄電池は初期投資が非常に大きくなるため、蓄電池を導入することに躊躇をしているユーザーは一定数存在し、蓄電池の普及・拡大の障害になっていると思います。ユーザーに初期費用が掛からないという特徴は蓄電池ビジネスを拡大する上で重要な点です。NR-Power Labでは地域新電力と連携し、電力の地産地消と域内経済循環の促進に向け共創を開始しています。ここには、リコーグループ(リコージャパン)で担う電力小売事業での知見・ノウハウや再生可能エネルギーの発電事業者のネットワークなどの活用が期待され、今回のビジネスコンセプトが大きく拡大する可能性を感じています。
また、NR-Power Labの親会社である日本ガイシは大容量、高エネルギー密度、長寿命を特長としたNAS®電池を製造しており、蓄電池の技術に長けた会社です。当社は投資会社のため技術的な部分に関しては、技術力・ノウハウを保有するパートナーと組むことでシナジーを発揮して投資を行っています。今回のStorageHubのビジネスモデル構築においては、NAS®電池とリチウム電池のハイブリッドの蓄電所を構築しますが、日本ガイシを親会社に持つNR-Power Labの蓄電池ノウハウが大いに活かされることを期待しています。