FROM LAB

次世代に解を挑戦のプロット

PROJECT REPORTS 006

2024.08.30

子どもたちが身近に感じられる
地域のエネルギーポテンシャル。(1/4)

山形県長井市の全小中学校で、再エネの見える化システムの実証を開始。

長井市総合政策課 再生可能エネルギー推進室 主査 斯波 優美子, 係長 渡邉 脩太 / おきたま新電力株式会社 専務取締役 江口忠博 / NR-Power Lab株式会社 シニアエンジニア 兼 事業企画担当 尾前 秀樹, 開発チームリーダー 上山 凌

関連情報:【プレスリリース|2024.7.1】山形県長井市のおきたま新電力と、秋田県鹿角市のかづのパワーにおいて、 電力デジタルサービスの実証を2024年7月1日より開始 ~パートナー共創を加速~

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NR-Power Labは、長井市とおきたま新電力と協業し、長井市の全小中学校で、再エネの見える化システムの実証を開始しました。長井市内の全小中学校8校では、消費電力の100%を再エネで運営しており、各学校にモニターを設置して、電力の消費量や発電状況、CO2の削減量を数値やグラフで表示しています。子どもたちが再エネの地産地消や環境への関心を高め、環境教育を充実させるとともに、地域の再エネの現状の理解を拡げるための取り組みを実証プロジェクトの皆さんにお聞きします。

どんな内容が描かれているか興味を持って、自分たちで考える。

今回の再エネの見える化実証に至る経緯を教えてください。

NR-Power Lab シニアエンジニア 兼 事業企画担当 尾前 秀樹(以下、NR-Power Lab 尾前):まず私たちNR-Power Labとおきたま新電力は、当社の出資者である日本ガイシが地域新電力会社の恵那電力やあばしり電力を設立する際に、意見交換などを通して関係があったことがきっかけです。

私たちはこれまで、再エネ発電所の発電電力量や、需要家の消費電力量をトラッキングし、CO2の削減量や再エネの地産地消率といった分析結果を交えて視覚化する「再エネの見える化システム」の開発を進めてきました。

長井市内の全ての小中学校は、消費電力の100%を再エネで運営しており、電力供給をおきたま新電力が担っています。おきたま新電力では、「地域の再エネの地産地消による、域内経済の循環」を目指すなかで、電力の地産地消に対する地域住民の理解を拡げる取り組みを続けています。

長井市は、市内の全小中学校で達成している地域でつくられた再エネ100%の施設運営を、子どもたちや地域の皆さんに分かりやすく伝える手段を模索していました。

そこで今回の実証では、長井市総合政策課とおきたま新電力と協力し、小中学校に再エネの「見える化システム」を設置しました。30分毎の発電電力量、消費電力量を計測し、地産地消率、CO2削減量などの数値やグラフをモニターに表示して、子どもたちへの環境教育の充実と、地域の再エネ、エネルギーの地産地消への理解を拡げるための取り組みをスタートしました。

再エネの見える化システムを小中学校に設置することになった経緯を教えてください。

長井市総合政策課 再生可能エネルギー推進室 主査 斯波 優美子(以下、長井市 斯波):本市では、小学生向けの環境基本計画を策定し、環境教育を充実させる取り組みを行っています。県内の先行事例として、令和6年1月から市内の全学校施設で使用する電力を再エネ100%、地産地消を達成しましたが、子どもたちや地域の皆さんに分かりやすく伝える手段を模索していました。

今回、見える化システムを設置したのは、市内の全小中学校で、小学校が6校、中学校が2校の合計8校です。子どもたちが身近なところから環境への関心を深め、自分たちでできることを考えるきっかけとすることを狙いとしています。

子供たちの反応はいかがでしたか?

長井市総合政策課 再生可能エネルギー推進室 係長 渡邉 脩太(以下、長井市 渡邉):学校内でのモニターの設置場所は、昇降口や体育館の入口など、生徒が日常的に目にする場所を選びました。設置後、ひと通り解説をすると、「長井でつくられた電気を使っていることを知らなかった」、「電気は見えないから見えるようになって嬉しい、もっと節電を頑張る」、「これまでの電気の使い方のラインを越えていないか確認も頑張る」、「家でも電気を大事に使いたい」と早速嬉しい言葉があり、担当としてやりがいを感じることができました。

学校で子どもたちが一番見る場所、主に昇降口などに設置したいと考えていましたが、そういった場所には電源がない場合も多く、設置作業を長井市とおきたま新電力のほぼ自前で行ったため、10m先や天井を這う配線作業がとても大変でした。この際、子どもたちから「なぜテレビを設置しているの?」、「何を映すの?」と質問攻めにあい、興味津々な子どもたちが多かったですね。「学校で使っている電気を表示するから毎日見てね」とPRできたことはとても良かったです。

まずは子どもたちの目に触れる機会をできるだけ増やして、“気になって”もらう。そのうえで教員の方々に授業で使用していただくことや、市が環境教育の出前授業をするなどフォローできればと思っています。結果として、子どもたちから省エネ、再エネの意識が地域に拡がるようにしていきたいです。

表示画面は、節電の目安になる契約電力のラインの表示や、理解できる言葉使い、イラストが描かれている点も良いポイントと考えています。子どもたちがモニターに集まり、どんな内容が描かれているか興味を持ってくれて、「木の絵は何だ、この線は何だ」など自分たちで考えていた様子に、環境教育はこうして広まるのだなと嬉しくなりました。

おきたま新電力株式会社 専務取締役 江口忠博(以下、おきたま新電力 江口):子どもたちの反応を聞くと嬉しいですね。おきたま新電力では、地域で使うためのエネルギーを同一地域で作り供給する、エネルギーにおける自立した地域づくりを目指しています。外部依存を減らし、地域の資源は先ずは地域で利用するという需給システムの構築です。

次世代の皆さんに、地域にある官民の発電施設から生まれる電気を地域の資源として捉え、発電施設を地域の共有財と感じてもらえることが大切だと考えています。そのためにも、まずは知っていただくことが大切ですね。

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